コラム / 保護者の方へ
サッカーの試合、親は何を見ればいいか
ボールを追うだけでは見えないもの

試合を見に行く。応援する。でも——
- 「気づいたら、うちの子がボールに触った場面しか見ていない」
- 「他の子と比べて、上手いのか下手なのかも分からない」
- 「見ていて何を褒めればいいのか、正直分からない」
こうした感覚を持つ保護者の方は、少なくありません。サッカーは、見方を知らないと何が起きているか分かりにくい競技だからです。
この記事は、川越市で少年サッカークラブ(KUGEDO FC Junior)を運営する立場から、試合で何を見ればいいかを整理したものです。
この記事でわかること
- ボールを追うだけでは見えないもの
- 「ボールに触る前」に注目する理由
- 学年別に見るべきポイント
- 試合後に何を話すか
- 見てはいけないもの(比較・結果)
先にお伝えします。戦術を勉強する必要はありません。 この記事で紹介するのは、サッカー経験がなくても分かる見方です。
1. なぜ「ボールを追う」と見えなくなるのか
試合の大半は「ボールを持っていない時間」
これが最も重要な事実です。一人の選手がボールに触れている時間は、試合全体のごく一部にすぎません。8人制でも11人制でも、残りの大半はボールを持っていない時間です。つまり、ボールを追って見ていると、その子のプレーの大半を見ていないことになります。
「何もしていない」ように見えて、していること
ボールから離れているとき、子どもは次のようなことをしています(あるいは、していません)。
- 周りを見る
- 味方が困っていないか確認する
- 相手の位置を把握する
- 走る位置を決める
ここに、その子の「考える力」が表れます。 ボールを持ったときのプレーは、その前の準備で決まっていることが多いのです。
保護者が見落としがちな理由
これは仕方のないことです。
- ボールは目立つ
- 自分の子を探すと、つい追ってしまう
- ゴールなど分かりやすい結果に目がいく
責める話ではありません。 ただ、意識して視野を広げると、見えるものが変わります。
2. まず見てほしい「3つのこと」
戦術は不要です。次の3点だけで、見え方が変わります。
① 顔が上がっているか
最も簡単で、最も本質的な観点です。 ボールを受ける前、その子は周りを見ているでしょうか。
- 顔が下を向いたまま → ボールしか見えていない
- 顔が上がっている → 周りの状況を把握しようとしている
顔が上がっている回数が増えていれば、それは確実な成長です。 技術より先に、ここが変わります。
② ボールを受ける前に動いているか
止まったままボールを待っているか、それとも受けやすい位置に動いているか。
- 味方が困っているとき、近づいているか
- 相手から離れた位置を探しているか
- 声を出して要求しているか
これは「判断」の表れです。 上手下手より、考えているかどうかが見えます。
③ ミスした後、どうしているか
ここに性格と成長が出ます。
- うつむいて止まってしまう
- すぐ切り替えて走り出す
- 味方に謝ってから戻る
ミスは必ず起きます。 大切なのは、その後です。切り替えが早くなっていれば、それはメンタル面の成長です。技術以上に価値があります。
3. 学年別に見るべきポイント
同じ試合でも、学年によって見るべき点が違います。
低学年(小1〜小2)——「楽しそうか」が最優先
この時期は、技術や戦術を見る段階ではありません。見るのは、笑っているか、積極的にボールに向かっているか、試合が終わったときどんな表情か——です。団子状態でボールに群がるのは、この年代では自然なことです。「もっと広がりなさい」と外から言う必要はありません。この時期に「サッカーは楽しい」という記憶を積むことが、6年間続けるための土台になります。
中学年(小3〜小4)——「顔が上がるか」を見る
周りを見る習慣がつき始める時期です。前述の「3つのこと」が、ちょうどこの年代から見えるようになります。ボールを受ける前に周りを見ているか、少しずつポジションを意識し始めているか、ミスの後の切り替えは早くなったか——。技術の差が見えやすくなる時期でもありますが、そこは見なくて構いません。姿勢のほうが後々効いてきます。
高学年(小5〜小6)——「役割を理解しているか」
チームの中での自分の役割を意識できるようになる時期です。味方をサポートする動きがあるか、守備のときに戻れているか、声を出して味方を動かしているか——。この年代になると、ボールに触らない時間の質がはっきり分かれます。一方で、成長期に入る子が出てくる時期でもあります。急に身長が伸びると、体の使い方が一時的にうまくいかなくなることが知られています。調子が落ちて見えても、技術の問題ではないことがあります。
4. ポジション別・見るところ
「うちの子はディフェンスだから、活躍が分かりにくい」——こうした声もよく聞きます。ポジションによって、評価すべき行動が違います。
前の選手(フォワード)
得点が分かりやすい指標ですが、それだけではありません。
- 相手ゴール前に入っていく回数
- 味方がボールを持ったとき、走り出しているか
- 点が取れなかった日も、諦めずに走り続けたか
シュートを外した回数を数えないでください。 打った回数のほうが重要です。打たない子は、外すこともありません。
中盤の選手
最も分かりにくいポジションかもしれません。
- 味方と相手の間に立てているか
- ボールを受ける前に周りを見ているか
- 攻守の切り替えで走れているか
中盤は「つなぐ」役割が多く、目立つ場面が少ないことがあります。しかしチームの中で最も走るポジションでもあります。「今日は何もしていないように見えた」と思ったら、走った量を見てあげてください。
後ろの選手(ディフェンス)
失点した場面だけで評価しないでください。
- 相手が来る前に、位置を取れているか
- 声を出して味方に伝えているか
- ボールを奪ったあと、慌てず味方を探せているか
失点は多くの要素が重なった結果です。ディフェンスの子だけの責任ではありません。むしろ、「防いだ場面」は記録に残りません。相手が抜けなかったから、何も起きなかった——それはディフェンスの成果です。
ゴールキーパー
最も評価が難しく、最も心に負担のかかるポジションです。
- 声を出して味方に指示できているか
- シュートに対して、位置取りを変えているか
- 失点した後、切り替えられているか
失点数で評価しないでください。 チーム全体の守備が崩れれば、キーパーがどれだけ良くても失点します。キーパーを希望する子は貴重です。 その子が続けたいと思える環境をつくることが、大人の役割だと考えています。
ポジションが固定されていない場合
低学年では、ポジションを固定しないチームも多くあります。これはいろいろな役割を経験させるという考え方に基づくもので、悪いことではありません。「うちの子だけ定位置がない」と心配する必要はありません。
5. 「上達しているか」を測る視点
「先週と比べて成長しているか」を判断したいとき、何を基準にするかです。
比べるのは「過去の自分の子」だけ
他の子と比べても、何も分かりません。
- 生まれ月が違う
- 体格が違う
- 始めた時期が違う
唯一意味のある比較は、1年前・半年前の自分の子です。
具体的に記録してみる
印象ではなく、具体的な行動で見てください。
| 見る項目 | 半年前 | 今 |
|---|---|---|
| ボールを受ける前に顔を上げるか | ||
| ミス後の切り替えにかかる時間 | ||
| 声を出す回数 | ||
| 守備に戻る回数 | ||
| 前を向いて仕掛ける回数 |
書き出すと、変化が見えます。 「変わっていない気がする」という漠然とした不安が、事実によって輪郭を持ちます。伸び悩みを感じている段階についてはサッカーが上手くなる小学生の共通点も参考にしてください。
動画は「良かった場面だけ」
動画を撮っている方も多いと思います。半年前と見比べるのは有効な方法です。ただし、撮った動画を見せて指摘するのは避けてください。 本人にとっては駄目出しの再生になります。見せるなら良かった場面だけ、あるいは本人が「見たい」と言ったときだけにしてください。
6. 試合中にやってはいけないこと
見方の話と表裏一体なので、簡潔に触れます。
❌ 指示を出す
「右!」「早く出せ!」「戻れ!」——これらは判断の機会を親が奪っている状態です。指示どおりに動く子は育ちますが、自分で決める子は育ちません。詳しくは少年サッカーで親がやってはいけない声かけにまとめました。
❌ ミスに反応する
ため息、舌打ち、頭を抱える——言葉でなくても伝わります。ミスをした直後の子どもは、まず親を見ます。そこで落胆の表情があると、次から挑戦しなくなります。
❌ 審判・相手・味方を批判する
保護者の言動は、子どもに直接影響します。 判定への不満、相手チームへの批判、味方のミスへの反応——これらは子どもに「人のせいにしてよい」と教えることになります。
✅ 代わりにできること
- 良いプレーに拍手する(自分の子以外にも)
- ミスのあと、切り替えられたら褒める
- 静かに見る
「静かに見る」は、消極的な選択ではありません。 子どもが自分で考える環境をつくる、積極的な行動です。
7. 試合後、何を話すか
ここが最も差がつく場面かもしれません。
まず「楽しかった?」から
試合直後の子どもは、まだ感情の整理がついていません。いきなり「あそこはこうすべきだった」と始めると、届かないだけでなく、試合の記憶を嫌なものにします。まずは「楽しかった?」から入ってください。
振り返りは本人が話し始めてから
子どもが自分から話し始めたら、聞く側に回ってください。
- 「どうだった?」
- 「一番よかったのはどこ?」
- 「次はどうしたい?」
問いかけの形にすると、自分で振り返る練習になります。
褒めるポイントの具体例
「よかったよ」より、具体的に伝えるほうが届きます。
| ❌ 曖昧 | ✅ 具体的 |
|---|---|
| よかったよ | さっき前を向いて仕掛けたの、よかったね |
| がんばったね | ミスの後すぐ走って戻ってたね |
| 惜しかったね | 顔を上げてから受けてたの、前より増えたね |
結果ではなく、挑戦や姿勢を認めてください。 結果は本人にもコントロールできません。
何も言わない日があってもいい
疲れている日、悔しそうな日は、何も言わないのが正解のこともあります。車の中で音楽をかけて、黙って帰る。それで十分な日もあります。
8. 負けた日・悔しがっている日
勝敗のある競技である以上、負ける日は必ず来ます。
泣いている場合
まず、そっとしておいてください。 「泣くな」「次があるよ」——こうした言葉は、多くの場合まだ届きません。感情が落ち着くまで待つほうが結果的に早いことがあります。悔しくて泣けるのは、本気で取り組んでいる証拠です。悪いことではありません。
「負けた原因」を探さない
車の中で「あそこがダメだった」と分析を始めないでください。負けた直後に必要なのは、分析ではありません。 本人が落ち着いてから、自分で振り返り始めるのを待ってください。
逆に、悔しがらない場合
「負けたのに平気そう」——これを心配する保護者の方もいます。表に出さないだけのことがあります。 また、低学年では勝敗への意識がまだ薄いことも自然です。「悔しくないの?」と問い詰めないでください。悔しさは強制されて生まれるものではありません。
自分を責めている場合
「自分のせいで負けた」と言う子には、事実で返してください。
- 「一人のせいで決まる競技じゃないよ」
- 「あの場面、よく戻ってたよ」
慰めではなく、具体的に見ていたことを伝えるほうが届きます。だからこそ、試合をよく見ておく意味があります。
何度も繰り返し負けている場合
チームとして勝てない状況が続くと、子どもの自信に影響することがあります。 この場合、勝敗そのものより「楽しめているか」を見てください。負け続けても楽しそうなら問題ありません。行きたがらなくなっているなら、別の観点で考える必要があります。行き渋りへの対応は、別記事「サッカーの練習を休みたがる日、どうするか」にまとめています。
9. 見に行けない場合
すべての試合に行けるとは限りません。行けないことを気に病む必要はありません。
行けない日の関わり方
- 「どうだった?」と聞く
- 本人が話したいだけ話させる
- 詳しく聞き出そうとしない
「勝った?負けた?」から入らないでください。 結果を最初に聞くと、結果が最も重要だというメッセージになります。
送迎だけでも十分
観戦は義務ではありません。送迎だけでも、十分に支えています。 「毎回応援に行けなくて申し訳ない」と感じる必要はありません。仕事や下のお子さんの都合で行けないことは、当然あります。
出場機会が少ない場合
ベンチで見ている時間が長い場合、観戦そのものがつらくなることがあります。この状況が続く場合は、環境を見直す判断材料になります。詳しくは試合に出られない…補欠の子に親ができることにまとめました。
10. KUGEDO FC Junior の考え方(参考として)
参考として、私たちの立場を記します。
試合中、指示で動かさない
私たちは、試合中に細かい指示を出しません。「どう思う?」と問いかけ、自分で判断する経験を積ませることを重視しています。指示で動かせばその場は上手くいきますが、判断力は育ちません。そのため、保護者の方にも指示は控えていただくようお願いしています。
子どもだけの作戦会議
試合の進め方を、子どもたちが話し合って決める場面を意図的に作っています。大人が決めたほうが早いのですが、自分たちで決めた経験に価値があると考えています。
出場機会を確保する
各学年15名までとしています(現在は受け入れに余裕があります)。人数が多いと、出場時間に差が出ます。 少人数であることは、試合に出る機会を確保するためでもあります。
保護者の観戦は自由です
観戦は歓迎しますが、義務ではありません。保護者当番がないため、「当番だから残る」という必要もありません。送迎だけで帰られて構いません。
基本情報
| 対象 | 小学1年生〜6年生 |
| 活動場所 | 川越東高校 第一グラウンド(埼玉県川越市久下戸6060)/駐車場あり |
| 活動日 | 火・水 19:00〜20:30/土・日 18:00〜19:30 |
| 月会費 | 12,000円 |
| 保護者当番 | なし(送迎のみ) |
| 人数 | 各学年15名まで(現在は受け入れに余裕があります) |
| 無料体験 | 3回まで/見学のみでもOK |
| 代表 | 山谷和紀(早稲田大学 先進理工学部卒/JFA公認B級コーチ/川越東高校サッカー部 コーチングスタッフ) |
よくある質問
サッカー経験がないので、見ても分かりません。
戦術の知識は不要です。「顔が上がっているか」「ミスの後どうしているか」の2点だけ見てください。これで十分に成長が分かります。
つい声が出てしまいます。
応援の声は問題ありません。避けたいのは「指示」です。「がんばれ」は応援ですが、「右に出せ」は指示です。この違いを意識してみてください。
自分の子ばかり見てしまいます。
自然なことです。ただ、たまに全体を見る時間を作ると、その子の動きも違って見えます。10分だけ全体を見る、という方法もあります。
試合後、本人が話したがりません。
無理に聞かないでください。話したくない日もあります。時間が経ってから話し始めることもよくあります。
他の保護者が指示を出しています。
ご自身は控えていただければ十分です。他のご家庭のことは、指摘しづらいと思います。気になる場合は、指導者に相談するという方法があります。
出場時間が短く、見に行くのがつらいです。
その気持ちは自然なものです。出場機会が少ない状態が長く続く場合は、環境を見直す判断材料になります。まずは指導者に相談してみてください。
動画を撮って見せてもいいですか?
撮ること自体は問題ありません。ただし見せて指摘するのは避けてください。良かった場面だけ、あるいは本人が見たいと言ったときだけにしてください。
まとめ——ボールの外を見る
サッカーの試合で親が何を見ればいいか、整理します。
- ボールを追わない(試合の大半はボールを持っていない時間)
- 顔が上がっているかを見る(周りを見ようとしているか)
- ミスの後どうしているかを見る(切り替えの早さは成長)
- 比べるのは過去の自分の子だけ(他の子と比べない)
- 試合後は「楽しかった?」から(いきなり反省会にしない)
そして、戦術を勉強する必要はありません。 「顔が上がっているか」「ミスの後どうしているか」——この2点だけで、その子の変化は十分に見えます。
そして最も大切なのは、見に行けなくても、支えられているということです。送迎だけでも、話を聞くだけでも、十分な関わりです。
親の関わり方については少年サッカーで親がやってはいけない声かけに、クラブ選びの視点は川越の少年サッカークラブの選び方|後悔しない5つの視点にまとめています。

KUGEDO FC Junior 編集部
監修: 代表 山谷和紀/川越東高校サッカー部 コーチングスタッフ




